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2005年8月24日 (水)

債権回収(2)~不動産執行①~

 前回から約2週間経過してしまいました。忙しかったためです。すいません。

 債権回収の続きです。今回は不動産執行について書いてみます。

 不動産とは、土地・建物のことです。なお、船舶・航空機などは、不動産ではありませんが、不動産に準じて取り扱われます(準不動産執行といいます)。

 不動産執行は、大きく分けて2つあります。

 「売り飛ばす」ものと、「売らずに活用して、あがった収益から回収する」ものです。

 「売り飛ばす」ものは、一般に「競売」といわれるものです。裁判所を通じて売ってもらい、売却代金の中から返済を受けます。

 「あがった収益から回収する」ものは、「強制管理」・「収益執行」と言われるもので、これは一般にはあまり知られていません。実務上も多くありません。

 競売手続の概略は次のとおりです。

1 競売申立

2 物件の調査

3 売却基準額決定

4 入札

 要するに、

1 裁判所に競売申立をすれば、

2 裁判所の方で物件を調査して、

3 物件の価格を決めてくれます。

4 それをもとに、入札が行われ、最も高い買値を呈示した人が購入できるというものです。

 なお、物件の調査は、裁判所執行官による現況調査と、不動産鑑定士による評価が行われます。そして、それらをもとに、裁判所で物件明細書が作られます。

 裁判所執行官と不動産鑑定士はただでは動いてくれませんので、不動産競売には数十万円以上の費用がかかります。物件が売れれば、これらの費用は、売却代金の中から優先的に回収できます。

 「現況調査報告書」「評価書」「物件明細書」をいわゆる「3点セット」と言います。

 競売物件に興味がある方は、裁判所で3点セットを置いてありますから、見に行ってみて下さい。一部インターネットで閲覧できるものも増えてきております。

 現況調査報告書は、地図や物件の写真、部屋の間取り図などが貼付されています。これを見ればどのような物件なのかはイメージが持てます。但し、部屋の中の写真まではないのが通常です。

 評価書は、不動産鑑定士が、近隣相場や物件の状況に鑑みて、妥当な値段をはじき出します。ごちゃごちゃと計算式が書いてありますが、要するにいくらと査定したのかという結論だけ見れば十分です。

 物件明細書は、権利関係が記載されています。たとえば、建物に入居者がいる場合、賃借権があるということで、物件を買っても自分で自由に使えないこともあります。そこで、物件明細書を見て、権利関係をチェックしておく必要があります。

 ただし、物件明細書は法的なことが書かれていますので、分からない部分もあるかもしれません。その際は、弁護士などに相談して下さい。買った後で、「使えない」ということのないように。

 さて、競売で不動産を買うのと、一般的な不動産業者を通じて買うのと、その違いはどこにあるのでしょうか。

 誤解を恐れずに言えば、競売はハイリスク・ハイリターンで、不動産業者を通じて買うのはローリスク・ローリターンです。

 競売での物件の価格は、一般の流通価格の7割程度になっていることが多いです。つまり、1000万円の物件なら、700万円程度の評価が出るということです。うまくいけば、1000万円の物件を700万円で買うことができます。

 値段が安い一方で、リスクもあります。競売では、現状のままの引渡しになります。壁が汚れているとか、水回りが汚いとか、お風呂が壊れているとか、裁判所に文句言っても裁判所は取り合ってくれません。つまり、「こんなはずじゃなかった」となる危険性があります。勿論裁判所はリフォームなんてしてくれません。

 よって、ハイリスク・ハイリターンです。

 不動産業者を通じて買うのならば、当然不動産業者の利益も考えた値段になってますから、値段は高くなります。しかし、不動産業者が中に入ってくれる分だけ安心です。

 よって、ローリスク・ローリターンです。

 うまく物件を見抜く力がある人にとっては、競売物件は宝の山であり、これで儲けて、本を出している方もおられます。

 一方、不動産業者でも見誤ることはあり、競売で落とした物件が思うように売れず、赤字になることもあるようです。

 債権者側からいえば、担保にとっていても、時価の7割程度でしか売れないということを念頭においておかねばなりません。ですから、時価1000万円の不動産を担保に取るのであれば、確実に回収したければ、700万円しか貸してはいけないということです。銀行なども競売になったときの価格は考慮した上で、貸付金額を決めています。

 ただし、バブル当時は全く違ったようです。私が聞いた話では、バブル当時、4億円の物件を担保に、5億円の融資をしようかという相談があったそうです。相談を受けた弁護士が、「いつも担保7掛けとか言っていたのに、おかしいじゃないか」と言ったところ、ノンバンクの担当者は「いや、これぐらいすぐに値上がりしますから、いいんですよ」とか言っていたそうです。

 やはりバブル時代って、みんなおかしな感覚だったんですね。

 以上が不動産の競売手続の概要です。今日書いたことは一般的にもよく知られていることだったかもしれません。

 次回は、「売らずに活用して、あがった収益から回収する」方法(強制管理・収益執行)について書いてみたいと思います。

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2005年8月10日 (水)

衆議院の解散

 債権回収の連載をしようと思っていましたが、衆議院が解散しましたので、これについて書いてみます。

 国会議員は、言うまでもありませんが、国民の選挙によって選ばれた国民の代表者です。

 国会議員には、衆議院議員と参議院議員がいますが、憲法上、衆議院議員の方が強い権限を持っています。参議院で法案が否決されても、衆議院で3分の2以上の賛成が得られれば法案は可決されます(憲法59条)。

 また予算を先に審議するのも衆議院で、しかも、一定の手続を経ても参議院と意見が一致しない場合などには、衆議院の議決が国会の議決となります(憲法60条)。つまり誤解を恐れずに言えば、国家予算も衆議院だけで決めることが可能だということです。

 ですので、衆議院議員を「代議士」と言いますが、参議院議員はあまり「代議士」とは言われません。なお、「代議士」とは、国民の代表者として、国政を行う人のことです。

 そうすると、一体参議院は何のためにあるのかと思われるかもしれません。

 参議院の存在意義として言われているのは、(1)議会の専制の防止、(2)下院と政府との衝突の緩和、(3)下院の軽率な行為・過誤の回避、(4)民意の忠実な反映(「憲法 新版」(芦部信喜著)267頁)ということです。要するに、国会は日本の行く末を決める大事な場所なのだから、より慎重に議論しましょうということです。

 ただ、実際のところは、参議院不要論もありますので、憲法改正案の中には、参議院消滅案もあります。

 さて、その国政を担う衆議院を、首相が解散させました。

 小泉首相は、「郵政民営化が必要ないか、国民に聞いてみたい」と言っています。

 国民の意思を問うということは、解散の重要な意義です。

 つまり、現在の国会議員は、郵政民営化法案に対して、NOを突きつけたわけですが、もし国民の大半が、郵政民営化をYESと思っているならば、解散して再び選挙を行えば、「郵政民営化YES」の国会議員が多数当選するはずです。そうすれば、今度は郵政民営化法案が可決されることになります。

 内閣の政策につき、国民がどう思っているのか、解散によって国民の意思を確かめることができます。

 なお、この解散につき、「否決したのは参議院なのに、可決した衆議院を解散するのはおかしい」という批判があります。

 しかし、参議院で否決されたということは、法案を成立させるためには、衆議院で3分の2以上の賛成を得なければなりません。可決したといっても、過半数ぎりぎりセーフでしたから、3分の2以上の賛成など得られるはずがありません。

 ですから、衆議院で今度は「否決」されることは明らかですから、参議院で否決された時点で衆議院を解散しても、それほどおかしなことではないと思います。

 解散総選挙で、3分の2以上を郵政民営化賛成の議員が占めればよいのですから。そうすれば、再び参議院が否決しても、衆議院で可決し、法案を成立させることができます。

 小泉首相は、「自民党と公明党で過半数がとれなければ、辞職する」と言っていますが、過半数だとまた参議院で否決されるはずなんですけどね。現実的には、自民・公明で3分の2以上というのは不可能でしょうけど。

 ただ、自民・公明で再び過半数を取ったら、国民の過半数が郵政民営化に賛成しているということで、事実上、参議院が否決しにくくなるという効果はあると思います。小泉首相はこれを狙っているのかもしれません。

 個人的には、これまで小泉首相を応援してきましたが、郵政民営化については、小泉首相個人の私怨がらみとアメリカの言いなり感が否めず、「郵政解散だ」と言われると、あまり応援する気になれません。郵政民営化が国益になるとも思えません。

 かと言って、民主党に政権交代するのもどうかと・・・。民主党は、旧社会党の残党集団だと揶揄されていますが、もしそうなら、あの村山政権の再来かと思うと不安になります。

 世論調査を見れば、小泉首相の支持率があがっておりますので、この解散総選挙は小泉首相の思惑どおりに動くかもしれませんね。

 投票については態度を決めかねておりますが、国民の一人として、じっくり考えて投票したいと思っております。

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2005年8月 3日 (水)

債権回収(1)~総論~

 ここ最近、何件か債権回収のご相談を受けました。

 売掛金を払ってもらえない、とか、貸金を返してもらえない、などです。

 不況の折、支払う方も辛いですし、支払を受ける方も回収できなければ他の支払に影響することがあり、切実な問題です。

 何回かに分けて、債権回収について書いてみたいと思います。

 今回は、大枠です。

 債権回収と言いましても、法律的には、相手方に全く財産がなければ回収はできません。

 テレビやマンガでは、身ぐるみ剥いだり、内蔵売れと迫ったりしていますが、これは言うまでもなく違法です。

 財産は大きく分けて、以下の3つです。

 (1)不動産

 (2)動産

 (3)債権

 (1)不動産とは土地・建物のことです。(2)動産とは、土地・建物以外の財産のことを言います。宝石や貴金属類、現金も動産です。(3)債権とは、請求権のこと。預金や売掛金等がこれにあたります。

 少し脱線しますが、よく法律相談でお聞きするのが、「貸したお金が返ってこない。裁判をして取り返したい」というご相談です。

 お気持ちは十分分かるのですが、「裁判をして取り返したい」の「裁判をする」と「取り返す」の間には、法律的には、大きな飛躍があります。

 と言いますのは、裁判を起こして、勝っても、自動的に現金になるわけではないからです。裁判所は、「被告は原告に対し、金100万円を支払え。」などと判決を下します。しかし、裁判所は、100万円の請求権があるということを認めてくれるだけで、裁判所が100万円の現金を渡してくれるわけではないのです。相手方が100万円支払わない場合、別途、「強制執行」という手続が必要になります。

 ですから、「裁判をして取り返したい」という「裁判をする」(→勝訴判決をもらう)ことと、「取り返す」(→回収する)こととの間には、大きな壁があるわけです。

 裁判をして、勝ったはいいけれど、結局回収できず、裁判の費用倒れになることもあります。

 話を戻しますが、債権回収で重要なのは、予め、相手がどのような財産を持っているのかを調べておくことです。

 支払が滞ってから、どうしようと考えていては手遅れになるのが大半です。

 確実に債権回収をしたいのであれば、お金を貸したり、取引をする段階で、相手方にどのような資産があり、滞ったときには、どのような財産から回収できるかを考えておく必要があります。

 「財産」としては上記には不動産・動産・債権をあげましたが、言うまでもなく「会社の信用」や「技術力」、「実績」なども財産ですので、これらも併せて総合的に考慮して、回収可能かどうかを考える必要があります。

 ただし、法的に「技術力」や「会社の信用」を差し押さえることはできませんので、強制執行の対象となるのは、不動産・動産・債権の3種類です。

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